君を好きになるって、はじめからわかってた。

 翌日。

 少し早めに学校に着いた。

「安井せ~んぱい」

 校舎の階段を上がっていると、聞き慣れない声が呼び止める。

「昨日は、どうも」

 振り返ると、バスケ部モテモテくんが立っていた。

「どうも」
「名前なんで知ってるの? とか思わないんっすか?」
「どうせ岩泉でしょ?」
「冷たいっすね~。これ嬉しかったんだけどな……」

 そう呟いた彼は、カットバンを私にみせた。

「それは違う! ごめん! 弟と間違って。やっぱり使ってないよね」
「もったいない。ここぞって時に使うんで」

「あっそ……ご自由に」

 私は素っ気ない返事をして立ち去ろうとしたけど、昨日のあれを思い出した。

「そうだ。2人の間に首を突っ込まないでね」

 彼は首を傾げて、すぐ思い出したように反論する。

「そんな他人の恋愛に構ってる余裕ないっすよ。自分のでいっぱいなんで」

 カットバンを力強く私に見せる。
 それがどんな意味なのか、多分私は知っている。
 だけど……。

「そう」

 私は呟くように、消すように、彼の前から消えた。

 なのに私どうしたの?
 なんでこんなに顔が熱いの?
 教室に入ってからもしばらく顔のほてりは冷めず、私は椅子に座ったまま意識を集中させる。

 大丈夫、落ち着け私。

 そんな私を落ち着かせてくれたのは結菜だった。

「おっはよ~!」

 今日はやけに元気がいい。
 何か良いことでもあったみたい。
 こんな時は、結菜の子供っぽいところに救われる。
 今日は特に抱きつきたいくらいだ。

「おはよ、結菜。なんか良いことでもあったの? やけに嬉しそうだね」
「ま~ね」

 岩泉がらみしかないか。
 ほんと結菜は幸せそうだ。

< 5 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop