冷徹副社長と甘やかし同棲生活
菅野さんは会話の途中でノートパソコンを操作し始めた。
手を止めて、私にも見えるようにパソコンの向きを変える。
ディスプレイには、うちの会社のホームページが映し出されていた。
「役員紹介のページ見てみなよ。副社長は椿さん、一人だけだよ?」
「たしかに……」
副社長は椿さん、ただ一人だった。
ということは、つまり、彼は社員から【鬼】と恐れられているということになる。
この鉄の掟を作ったのも、厳しい処罰を与えるのも、あの人だというのか。
面接のときは、すごく優しくて、混乱している私を見守ってくれていた。
そんな彼に憧れて、早く社会人になりたいって思っていた。
ほんの十数分だったけれど、副社長の人柄を十分に感じられた時間だった。