冷徹副社長と甘やかし同棲生活
 
「なんだ?」

「持ってきたものは、ちゃんとあった場所にしまってください。例えばその雑誌、読んだらちゃんとしまってくださいよ」


 テーブルにおかれたスポーツ雑誌に冷たい視線を送ると、椿さんの笑い声が聞こえた。
 椿さんが声を出して笑うのは珍しい。


「どうして笑うんですか?」

「母親みたいに口うるさいなって思って」

「それのなにがおかしいんです?」

「いや、なんだか懐かしくてな、こういう感覚は久しぶりだ」


 椿さんは目を細めて、どこか切なそうに笑った。胸がきゅっと苦しくなって、それ以上の追求はできなかった。
< 184 / 321 >

この作品をシェア

pagetop