冷徹副社長と甘やかし同棲生活

 パンプスを脱いで、静かに廊下を歩き、そっと扉を開けると……


「おかえり。思ったより早くてびっくりしたよ」

 ダイニングテーブルで、私が作ったおかずを食べている椿さんがいた。


「椿さん……」

 乾いたばっかりなのに、再び涙が頬を伝う。絶対に理由を聞かれるから、泣いてはいけない。副社長の悪口に怒って飛び出してきたなんて、言えるわけがない。

 わかっているのに、椿さんの顔を見たら、涙が止まらない。


「柏木、どうした……?」

 涙を見られたくなくて、下を向いた。椅子を引いて立ち上がる音が聞こえる。
 椿さんがこっちに来てくれるのがわかるけど、なんて答えたらいいかわからない。

 
< 203 / 321 >

この作品をシェア

pagetop