冷徹副社長と甘やかし同棲生活

 六月末の週末、私と椿さんはリビングで旅行のパンフレットを吟味していた。

 梅雨真っ只中で、今日もしとしとと雨が降っているけれど、気持ちは晴れやかだ。
 大好きな人と、当たり前のように一緒に過ごせる幸せ。


 先日、旅行に誘われてからは余計にうかれている。


「俺はやっぱり、貸切風呂つきの部屋に泊まりたい」

「でも、一泊辺りの値段すごいことになってますよ?」

 椿さんとってたいした金額ではないけれど、わざと難癖をつけてみる。なぜならーー


「どんなに高くてもいい。お前と好きなときに、一緒に温泉に入れるのなら」


ーー椿さんは、私と一緒に温泉に入ろうとしているからだ。この旅行前に、父さんと母さんに会いに行って、交際を了承してもらうと張り切っている。



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