冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「では、いってくる。戸締りには気をつけるように。今日の夜か、明日には帰るから」

「わかりました。椿さんも気をつけてくださいね」

「ああ。少しの間寂しくさせるが、ごめんな」

 
 椿さんは、旅行鞄を片手に、車で実家へと向かった。
 外に出る前に、お見送りをする私に優しいキスを送った。

 いつもなら、キスを一回するだけで、幸せに満ち溢れるはずなのに。
 今日は、胸がきゅっとくるしくなって、なぜか泣きそうになる。

 いやな予感がするのは、気のせいなの?


 椿さんが出発してから三時間くらい経った頃、スマホに着信があった。
 電話の相手は葵衣くんだった。

 たまにメッセージのやりとりはするけれど、電話が来るのは初めてだ。
 珍しいことが起きると、また不安になる。
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