冷徹副社長と甘やかし同棲生活

「美緒、早く戻りなさい!」


 母さんは私の姿を見るや否や、怒鳴るようにそう言った。
 顔面蒼白で、今にも泣きだしそうだ。

 
 いくつかの椅子や飾り物は壊され、いたるところにお札が落ちている。
 おそらく、レジにあったお金を渡して帰ってもらおうとしたのだろう。

 
 店内には、お客さんはサングラスをした男性一人だけだった。


「そこの女、もしかしてこの店の娘か?」


 リーゼント頭で目つきの悪い男が話しかけてきた。
 えんじ色のスーツに柄物のシャツ、ゴールドのネックレスを身に着けている。

 ドラマや漫画に出てきそうな、いかにも借金取りな見た目である。

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