冷徹副社長と甘やかし同棲生活
明日からの生活で、少しずつ副社長のことを知ることができたら……。
家政婦としていくにもかかわらず、そんな期待が風船のように膨らんでいった。
――翌日の朝。
玄関でパンプスを履いていると、パタパタとスリッパの音が聞こえた。母さんが見送りに来てくれたとすぐにわかった。
「いってくるね」
「いってらっしゃい。体には気をつけるんだよ」
「うん。父さんは?」
「見送りは寂しくなるからやめておくってさ」
「そっか。……父さん、またちょくちょく帰ってくるからね!」
恐らく居間で新聞を読んでいる父さんに届くように、お腹に力をいれて声をだした。
たぶん何も返ってこないだろうと、返事を待たずに玄関の扉をあけた。