冷徹副社長と甘やかし同棲生活
同じ空間で息をしている。そう意識するだけで胸の奥が熱い。彼の一つ一つの動作が気になって、目で追ってしまう。
こんな気持ちになるのは、生まれてはじめてのことだった。
「ーーもうすぐ着くが、まずは同居のルールについて話しておきたい」
「ルール、ですか?」
「ああ。例えば同居のことは会社の人間には秘密にすること。あとは、仕事は料理を最優先にする、とかだな」
嫌な予感がした。副社長はきっと、細かいルールを多数用意している。仕事の最優先が料理だなんて、わざわざ決める必要があるのだろうか?
さっきまであった胸のときめきは、車窓の隙間から入り込む風とともに流れていった。
「あの、どうして優先順位を決めるんです?」