俺の罪、甘い罰。
「そうだなぁ…。」


俺はそう答えながら、もう一度彼女の頭に頬を寄せた。


自然と、彼女の手を握る自分の手に力がこもっていた。




車で片道3時間という距離は、遠距離と言うには近く、


だけど簡単に、いつでも会えるという距離でもない。


中途半端で、それが却って辛くなる事があるのかもしれない。


そう思うからこそ、彼女の不安を取り除いてあげたかった。




「だけど…。」


俺は言葉を選びながら続けた。



「だけど、きっと大丈夫だよ、俺達なら…。」



本当にそう思うんだ。


そりゃ寂しいし、いつでも会える距離にいて欲しいっていうのが本音だけど。


だけど、こんなに長い時間がかかって、ようやく辿り着いたんだ。


こうして結ばれた俺達が、距離なんかに負けるわけが無いって思ってる。



「そうだね…。」


そう答えながら、彼女が俺の手を握る力も強くなった。


まるで俺の気持ちに答えるように、ぎゅっと…。




「それに、今の仕事が好きだろう…?」


3ヶ月間、一番近くで河原を見てきたんだ。


分かってる。


彼女がパソコン講師という仕事が好きだって事。


それを俺の都合だけで奪うのは、可哀想過ぎるし、勝手過ぎる気がした。



「…うん…。」


彼女はコクンと頷いた。


俺の感じていた事に間違いはないと思えた。



「俺達ならきっと大丈夫だから、お前も向こうで気が済むまで頑張れ。時々遊びに行くから。」


そう言って、握っていた手を一度離すと、俺は彼女の頭を撫でた。


「うん、約束だよ…?」


振り返りながら見上げていた河原に、


「約束する…。」


俺は頷きながら彼女の頬を撫でた。


泣き出しそうな顔をしている河原を見ているのが辛かった。
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