俺の罪、甘い罰。
「私は今まで何回も言ったのに。」


そうやって、わざとふて腐れたフリをして笑う河原に、


「大体“好きだ”とか“愛してる”なんて言葉は、思ってなくても言えるんだぞ?だから俺は態度で示しているつもりだけど?」


俺がそう畳み掛けると、



「そうだけど、言われたかったなーっ。」


彼女は笑いながら頬をプッと膨らませて、また前を向いた。



『言葉が欲しい…か…。』


そう思いながら、俺は河原の体を抱き締め直した。


彼女の背中がピッタリと寄り添う俺の胸や、


抱き締めているこの腕から、


俺の愛情が伝わるように。




そして…


俺は心に決めた。




俺は一呼吸、間を置くと、彼女の頭に頬を寄せた。


同時に、彼女の耳の上辺りに俺の口元が近付いた。



「一度しか言わない。」


「えっ?」


突然の俺の言葉に、彼女は振り返ろうとしたけれど、俺はそれを阻止した。



『勘弁してくれ。じっと見つめられたら、ますます言えなくなる。』



そんな気持ちで俺は続けた。


「一度しか言わない。だからよく聞いて?」


「ん…。」


彼女はそう答えると、抱き締めている俺の腕に両手を添えた。
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