俺の罪、甘い罰。
河原が高校での最後の授業を終えたこの日、俺達は学校を出て一緒に食事をした。


俺がその提案をしたのは、まだ二人でパソコン教室の準備室にいた時の事だった。



「せっかくだからどこかでメシ、食ってこうか?」


俺の腕の中で泣いていた河原にそう言うと、



「こんな“泣きました”って顔で外食なんて嫌だぁ。」


と、河原がゴネた。



当然、却下になるかと思ったけれど、抱き締めたまま、


「大丈夫だよ。」


そう言って、彼女の頭を撫でると




「…じゃあ、行く。」


俺にしがみついたまま、鼻をグスグス言わせて答えた彼女が余りに素直だったから、


俺はクスッと笑った。




…確かに河原は号泣していた。


目は真っ赤っかだし、化粧もグチャグチャ。


彼女は、


「このままで表に出るのは嫌だから。」


そう言って、学校を出る前に化粧を直したのだけれど、


その直後、たまたま出くわした同僚の教師に泣いた事がすぐにバレていた。




同僚達は


『そんなにこの学校との別れが辛かったのか。』


と、勘違いしていたようだ。




『本当は違うのに。』



そう思いながら、真実は俺達二人だけの秘密にして学校を後にした。
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