Sの陥落、Mの発症
同期との再会を喜んだ翌日、私の心は軽く、精神的にも落ち着きを取り戻していた。
その理由は明白で、今日から一泊二日の日程であの男が出張で不在だからだ。
明日は金曜日なので週末を挟むと四日間顔を合わせないことになる。

これだけ顔を見なければもう取り乱したりしない。
この間はあんな密室に二人きりだったから変な雰囲気になっただけで、二人にならないよう気を付ければいいだけなんだから。

「え、歓送迎会?」
「はい、明日なので改めて社内メール回した方がいいですよね?」

完全に忘れてた。
歓送迎会ということは異動してきた彼が参加しないわけがない。
でも出張で不在になっているってことは。

「ねぇ、佐野くんは出張だけど…」
「そうなんです、でも店がどうしてもここしか予約空いてなくて、佐野さんに確認したら『戻れると思うから大丈夫』ってことだったので…。やっぱり延期しましょうか?」
「いえ、本人がそう言ったならいいわ。でも…出張で疲れてるかもしれないから、無理して参加しなくてもいいってメールで一緒に伝えておいて。課の飲み会なんていつでもできるから」
「分かりました」

欠席してくれた方がいいだなんて上司としては間違ってるのかもしれないけど。
いや、上司にあんなことする方がおかしいんだから。

気付くとまた思い出し始めた思考を振り払うように目の前の仕事に集中した。

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