Elevator Girl
         ***

馴染みのバーテンダーから連絡があったのは、夜の11時。

「杏奈さん、つぶれちゃって。迎えに来てもらえませんかね?」


…あいつ、何してんだ。


つぶれるまで飲むなんて、らしくない。
急いで54Fにむかった。






カウンター、一番奥。
仕事の愚痴も、プライベートな話も、いつもここだった。


「おい、帰るぞ」


「………く、ぼ?」


鈴木がゆっくりと体をおこして、こちらをむく。


やめてくれ、と思った。

いったい何の拷問だよ。

酒で潤んだ瞳と、上気した頬に理性のぐらつく音がした。


なんと言っても、昼間のキスが効いている。
一瞬であの感触を思い出した。



「…立てるか?」

「くぼ、え、なんで、くぼがいるの」

「リョウさんから連絡が入ったんだよ、
お前何でそんなに飲んだわけ」


突然、鈴木の顔がこわばった。


「…か、かんけいないでしょ」

「関係ない?迎えに来てやったのに、それはないだろ」

「わたしは呼んでない、ひとりで帰れるから!」



無理に立とうとして、ふらついた。

傾く体に手を伸ばそうとして、


「さわんないで!」

鋭い声と同時に、振り払われる。





「………あ」



鈴木が痛そうな顔をする。

…いたいのは、俺の方だよ。




なんだよ、どこでそんなに間違えた?                                                                                                       
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