いつまでも弟だと思うなよ。
「よしよし、チカちゃん偉い子」
「………」
満足気にチカちゃんの頭を撫でる私とは対照的に、チカちゃんの表情は悔しそうだった。
「チカちゃん、反抗期は全然ウェルカムだよ。ただね、さっきのはダメ。分かった?」
チカちゃんが不機嫌なのは分かってても、私はそう言うしかない。
「…じゃ、また明日ねチカちゃん」
でもこれ以上チカちゃんを不機嫌にはさせたくなくて、私は早く部屋を出て行こうとドアに手をかけた。
けど。
「可奈」
本日何度目か分からない呼び捨てで、私の足は止まってしまう。
「だから…」
呼び捨てにしないの、って振り向こうとした。
けどそれよりも先に、チカちゃんがこっちに迫ってくる気配がして。
───トン、と。
抱きしめるかのように、けど一切触れないで。私の体は、ドアとチカちゃんの体に挟まれるように覆われていた。