さよならメランコリー
だからこそ今あなたが苦しんでいること、私は知っている。

「頑張れ」って、あの言葉は心からのものだったから。私に幸せになってほしいって、彼女は今もきっと思っているだろうから。

自分だって、彼のことがすきですきでたまらないくせにね。カナちゃんは優しい優しい女の子。

だけど、ごめんね。私はあなたとは違う。あなたみたいな綺麗な人間じゃない。憧れたって、きっとなれやしない。


「カナちゃん、今年はチョコのロールケーキにしようと思うの! これ、昨日試しに作ってみたんだけど味見してくれないかな?」

「え、」


毎年恒例のお願いだけど、今年これを彼女に頼むのは意地悪だ。 私はそれをわかってて平気でするの。そんな汚い人間よ。


「……カナちゃん? やだった?」


彼女の複雑な表情の意味を私はよく知っているのに、少しも気づかないふりをする。

嫌に決まってる、自分の好きな人に渡すための練習台だなんて。 それでもカナちゃんは、無理やり笑ってみせた。


「あ、や、ちがくて。 えと、毎年悪いなーって思っちゃって」

「そんなことないよ! カナちゃんは正直だからお世辞とか言わないしアドバイスも的確だし! ……それに、まずいの渡したくないもん」

「あー、そうだよね! じゃあ今年ももらうね。ありがとう」


下手くそだ。 カナちゃんの作り笑いは、誰がみたってわかるくらいに下手くそ。
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