さよならメランコリー
一体なにをしようとしていたんだろう。 彼女があれを食べても食べなくても、なにかが変わるわけじゃないのに。馬鹿みたい。


「トウカが作ったん?」

「えへへ、正解でーすっ! でも見ちゃだめー」


窓の前に立って通せんぼのポーズをすると、コウキくんは口を尖らせて「うわ、ケチ! 見るのもだめとか! ケチ!」と、大げさにブーイングする。 なんだなんだ、可愛いなあ。


「ケチでけっこう〜と言いたいところだけど、仕方ないから見るだけならいっか!」

「見るだけかよ」

「ふふっ見るだけ〜!」


不服そうな顔をしながらも、「相変わらずすげえなあ」と感心したように言うコウキくん。 「食べたいなあ、お腹空いたなあ〜」とちらちら私を見てアピールする姿にぐらっときたけど、なんとか「だめ!」と言い張った。


こういうとき、お料理頑張ってよかったなあってすごく思う。

コウキくんは私のお菓子やお弁当をつまみ食いしては、毎回「もういいよ!」ってくらい褒め倒してくれる。 だから、私は嬉しくって嬉しくって、また学校にお菓子やお弁当を作って持っていく。コウキくん今日は来ないかな、なんて期待しながら。


「お、カナは今日も試食係?」


コウキくんがにやにやしながら言うと、カナちゃんは「うるさいなあ……」と小さく言い返すだけだった。 あれ、いつもならもっと突っかかってくるのに、と彼は拍子抜けたことだろう。
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