さよならメランコリー
「都合悪い? 急だし、無理だったら全然いいんだけど……」


私が困っていると思ったのか、不安気に言うコウキくんに私は慌てて首を縦に振った。 断る理由なんてあるわけがない。


「だいじょうぶっ!全然!」

「……まじ? 無理してない?」

「ぜんっっぜん無理してない‼︎」


ブンブンと首をさらに大きく振る。勢い余って、首がもげるんじゃないかと思うくらいの全力で。

そうしたら、コウキくんは一瞬きょとんとしてから、いつものようにけらけらと笑った。


「おっけ、それならよかった。じゃあまた家帰ったら連絡してい?」

「う、うんっ!」


いつだって自信満々に笑ってるコウキくん弱気な表情。そんなの私は今までに一度だって見たことなくて。

ばくばくと、心臓が大げさに飛び跳ねる。どくどくと、血液が身体中を駆け巡る。

ああ、落ち着かない。


「……ずるいよ」


そんな期待したくなるような表情、しないでよ。




いつの間にか自分の席に戻っていたカナちゃんと視線がぶつかる。なぜだか気まずくて目を逸らそうとすれば、カナちゃんのほうから私に声をかけてきた。


「そういえば、次、テストだね」


何を言うかと思えば……一瞬でもドキリとした私が馬鹿みたいだ。ああ、うざったい。言葉がじゃなくて、態度が。表情が。本当にむかつく。
< 15 / 34 >

この作品をシェア

pagetop