さよならメランコリー
そうだね、といつもの作り笑いで怒りを閉じ込めようとするけれど上手く隠せている気がしない。そもそもそこまでちゃんと隠したいとも思っていないのかもしれない。
知らないふりするなら完璧にそうしてくれなきゃ困る。ほんとは気になって気になってしょうがないです、みたいな顔に吐き気がする。
しかも、それが計算なんかじゃないところが余計に気に食わない。
私のことを応援してくれているようで、私の邪魔をするカナちゃん。ずっと仲良しごっこをしてくれる親友のカナちゃん。
私、ずるくないようで、無自覚に誰よりもずるいあなたのそういうところが大嫌いだよ。世界でいちばん、大嫌い。
いつも以上に濃く深い黒で塗りつぶされたこの感情を、どうにかして処理しないと理由のわからない涙をこぼしてしまいそうだった。彼女の前でだけはもう泣きたくなかった。
だから私は考えるまでもなく、「聞いてよ、カナちゃん」と目の前の彼女を傷つけるための言葉を吐き出した。
「私、日曜日にコウキくんと出かけることになったんだよ」
「へえ、そっか……そうなんだ。よかったじゃん」
「うん。すっごく嬉しい! だから、カナちゃんにはまたちゃんと報告するね」
これってデートっていうのかなあ、ってカナちゃんのとなりを通り過ぎるときに言ってやった。内緒話をするみたいに甘く、柔らかく、静かに。
高くてべっとりとまとわりつくような気持ち悪い私の声は、きっとカナちゃんの耳にもしっかり届いただろう。