年上の彼。
私の家のお隣さん。

面倒見がよくて、いつも遊んでくれていた。

いつも遊ぶのは決まってどちらかのベランダ。

人見知りでなかなか友達ができなかった引っ込み思案の私にたくさんの事を教えてくれた。

私より5歳上で、もはやお兄ちゃんだと思っていたのは中学生の時まで。

いつからか恋心を抱いた。

裕ちゃんが一人暮らしでお隣さんじゃなくなったと聞いた日にはびっくりするくらい泣いた。

近くて遠い存在。

この思い出のベランダは私にとっていつしか癒しの場所になっていた。

たまに帰省する裕ちゃんをこのベランダで待っている、なんて貴方は知らないでしょうけど。

「お前、ここ出るんだって?」

「うん。本当は離れたくないんだけどね」


中学三年生の時、二十歳になった大人の裕ちゃんに想いを伝えた。

だけど「まだ若いんだから、俺じゃなくてもいい人はいっぱいいる」だって。

だから言われた通りいっぱい色んな人を見てきたけど、見れば見るほど裕ちゃんじゃないとダメで。

最後の足掻きとして裕ちゃんが勤めている会社を受けたが、なんの取り柄のない私は呆気なく落とされた。

唯一決まった私の就職先は地元から片道三時間と離れた場所。

きっと神様が諦めなさいと促しているのかもしれない。

「小春は寂しがり屋だからなぁ〜 心配だな〜」

「思ってもないくせに」

「ははっ バレた?」

ベランダの手すりに腕を掛け煙草を吸っている姿はここ最近見てなかったな。

私の知ってる限り裕ちゃんは決まって嫌な事があると煙草に手をつける。

きっと何かあったんだろうな。

そしてもうこんな会話もこの時間を過ごす事もなくなるんだろうな。

自分で勝手にしんみりさせておきながら、涙が出そうになる。
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