その件は結婚してからでもいいでしょうか

ピロロン。

突然パソコンからメールを受信する音がなった。

「ん?」
先生がデスクの方を向く。それから箸とごはんを置いて、立ち上がった。

「ちょっと失礼」
先生がパソコンを覗き、何クリックかすると突然「やばっ」と声を上げた。

「どうしたんですか?」
美穂子は驚いて尋ねた。

「今日までに、読者プレゼントの色紙描かなくちゃいけなかったの、忘れてた」

椅子に座って、引き出しから一枚の色紙を取り出す。

美穂子の目がパッと輝いた。

描くんだ、今から!

美穂子は立ち上がって、先生のそばにたった。

「見ててもいいですか?」
「いいよー」

先生は黒ペンを一つ持つと、しばらく色紙を見つめる。

すごい集中力。
さっきまでのぼけっとした感じが、一瞬でなくなった。

美穂子はじわじわとこみ上げてくる興奮に、手のひらを握りしめた。

先生が小さく一つ息を吐く。

それからおもむろに描きだした。

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