その件は結婚してからでもいいでしょうか
総毛立つ。
美穂子は息を飲んだ。
真っ白だった色紙に、見る間に「中島悠馬」が描かれる。下書きもせず、でも迷いもなく、あっという間に浮き上がってくる。
背中がゾクゾクして、腕に鳥肌がたった。
先生のペンを持つ長い指。
男性の骨ばった手の甲。
一本線を入れるたびに、手が色紙をこする音がする。
前髪が真剣な瞳にかかる。
少し唇を横に引いている。
目の前に、特別の才を持つ、男性がいる。
痛いほどの衝撃が、心臓に走った。
胸キュンなんていう、軽々しいものじゃない。
爆弾が爆発したような。
この衝撃で美穂子が死んでしまうくらいの。
手が震えてきた。
瞬く間に線が描かれ、次にカラーを入れる。
最後、中島悠馬の目の中に色を入れると、確かに命が宿った。
これが、リアル。
「はい、終わり」
先生はペンを置くと、ほっと一息ついた。
「乾いたら、バイク便呼ばなくちゃ」
そこで美穂子を見上げる。
「あれ、美穂ちゃん、どうした?」