その件は結婚してからでもいいでしょうか
「勘弁ならぬ。成敗!」
美穂子は部屋の外に駆け出すと、立てかけてあったクイックルワイパーを掴む。
唖然としている先生のあそこに向けて、振り下ろそうとした。
「げっ。冗談じゃないーって」
先生がベッドから飛び降りる。
布団が落ちて、見たくない膨らみが再び目に飛び込んだ。
「きゃーっ」
目をつむって、闇雲にクイックルワイパーを振り回す。
「おおおおお」
先生の声がしばらく聞こえたが、とうとう「ストップ!」と叫んだ。ブンブン振り回していたクイックルワイパーを、ガシッと掴まれる。
「落ち着けっ。これは生理現象だっ」
先生が怒鳴った。
「違いますっ。変態なこと、考えてたんだっ」
「んなわけないって。これは男なら誰でもなる、つまりっ」
「中島悠馬くんは、なりませんっ」
「なるよ! 描いてないだけでっ!」
美穂子は掴まれたクイックルを外そうと、むやみやたらに暴れた。
「待った待った待った。ちょっと納めるから、時間くれって」
「納めるって。なにそれ!」
「いいから、部屋からとりあえず出てっ」
そしてとうとう、美穂子はクイックルワイパーごと、部屋から追い出された。
はあはあはあ。
美穂子はクイックルを両手に握りしめ、肩で息をする。
やばい。
勘違いするところだった。
アレに「恋する」とか、ありえなかった。
きゅんも、どきんも、全くない。
あるのは、怒りのみ。