その件は結婚してからでもいいでしょうか
今回の「花と流星」は、三日間の作業で終了。
アシスタントたちは、代わる代わるシャワーを浴びたり、仮眠をとったりしながら、作業を無事終えた。
夜九時。
毎度のごとく「飲みに行く人!」と、小島さんがメンバーを募った。
「行くよね?」
美穂子は、吉田さんにガシッと袖を掴まれる。
「わたしは……」
美穂子は迷った。
絶対隣は今、ゴミだらけのひどい惨状になっている。
先生がお腹を空かせて待っているかもしれないし。
でもっ。
先生とどうやって話をすればいいのかわからない。挙動不審になる自信がある。
「いこうかな……」
美穂子は言った。
「そうこなくちゃっ」
小島さんは意気揚々と帰り支度を始めた。他のみんなも支度を始める。
美穂子はみんなから隠れるように、メモ帳に「飲んできます」と走り書きをした。カップを片付けるついでに、隣に続くドアのボックスへ、そっとメモを入れる。
先生のお世話をするのも仕事なのに、職場放棄なんだろうか、コレ。
「じゃあ、出発」
「美穂ちゃん、行こう! 鍵閉めちゃうよお」
山井さんの声が玄関から聞こえてきた。
「はあい」
美穂子は、最後にちらっとキッチンのドアを見ると、振り切るように首を振って、飲みに出かけた。