その件は結婚してからでもいいでしょうか

飲み会は、本能について考えさせられる話題ばかりだった。

山井さんは年齢も三十を超えて、経験をいろいろつんでいることがわかった。これまであまり話したがらなかったのに、びっくりだ。

いろいろ経験した結果、桜先生に尽くします、に落ち着いたと。

みんなは「なるほど」と頷くばかり。

小島さんは、今彼が寄生しているので振り切りたいが、体の方が寂しくなるからなかなか強く出られないらしい。

「結局、女も本能にはかなわないのよね」
小島さんが、アルコールでピンクになった頬のまま、呟いた。

吉田さんと美穂子は似たり寄ったり。ずっと二次元を愛して生きて来た。

「だって、わたしみたいなの、現実は厳しいわけ」
吉田さんが唐揚げを口に入れながら喋る。
「誰が、こんなプニプニ女を、好むんだっていうね」

「ダイエットしないの? 吉田さん、痩せたら結構いけるんじゃない?」
小島さんが言う。

「ほんとそう思う? じゃあ、明日からダイエットするかなあ」
「明日じゃダメ。今から」
山井さんが、吉田さんの唐揚げを取り上げようとしたので、ちょっとした諍いにまで発展した。

「美穂ちゃんは?」
唐揚げを死守した吉田さんが尋ねる。

「わたしは……」
美穂子は言い淀む。

小島さんの視線が「しゃべっちゃいなよ」と訴えてきたが、とても全部は話せない。

「好きかも、と思う人は最近できましたけど」
それだけ言った。
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