その件は結婚してからでもいいでしょうか

「え?」
美穂子は固まった。手の上の雑誌に目が釘付けになる。

表紙は普通の少女漫画雑誌のように見えるけど……。

恐る恐るページをめくる。
信じられないような絵が目に飛び込んできた。美穂子はとっさにページを閉じる。

絵は綺麗なのに、いやに男女が絡んでる。
絡みすぎ……。

美穂子の顔がかあっと真っ赤になった。

「かわいいわあ、美穂ちゃん」
八代さんがニコニコしながら美穂子を見る。

「むむむむむ、無理です」
美穂子は首をブンブン振った。

こんなこと、経験もないのに描けるわけない。

「大丈夫よ! そんなこともあろうかと、資料も持ってきました」
足元に置いてある紙袋から、DVDをドカンとテーブルに置く。

「縛ったりとか、痴漢とか、そういうんじゃなくて、ラブラブなのばっかり持ってきたから」
「はあ?」

美穂子の限界を超えている。今にもショートしそうだ。

「エロ漫画って言ってもね、恋愛がメインなの。恋をして、エッチする。女性は行為自体だけじゃなくて、そこに至る過程も重要なの。それが一種の前戯」

「ぜぜ、前戯?」
「エッチ前の準備ってこと」

ああ、なんか呼吸困難になってきた。やばい、このままだと死ぬかも。

美穂子の目にはじわりと涙がにじんできた。

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