その件は結婚してからでもいいでしょうか
「美穂ちゃんからも言って。俺、手出してないよな」
「えっと……」
美穂子は戸惑う。この手の話題に、なんと返すのがいいのかがわからない。
「勘弁してよ。美穂ちゃんはリアルな男がダメなタイプなんだから」
先生がぶつくさ言った。
「そうなの?」
八代さんが驚いて、ソファの上でぴょんと跳ねる。
「男、全然ダメ?」
「ダメといえば、ダメです」
「じゃあ、エッチしたことは?」
「はあ?」
美穂子は目をぱちくりした。
「ないの?」
八代さんが詰め寄る。
「ない、ですかね」
美穂子は小さな声で返事をした。
「そっか! わたしって、読みがいいわ」
八代さんがすごく嬉しそうに一つパンッと手を叩く。
「準備万端だもの」
八代さんは美穂子に「座って」と自分の隣を示す。美穂子は素直にそれに従った。
「美穂ちゃんに、チャンスのお話持ってきました」
カバンからおもむろに雑誌を取り出す。
「これ、今、売りだし中の雑誌。結構人気も出てきたの」
美穂子の手にポンと置く。
「女性向けのちょいエッチな漫画雑誌。ここでかける漫画家さんを探してるの。美穂ちゃん、やってみない?」
八代さんが言った。