どうせ好きじゃ、ないくせに。
そう、不敵な笑みを浮かべる、そんな彼の瞳を。
私は確かに、見た気がする。
本当におぼろげだけど、なんとなく。
……もしかしたら、昨夜に?
「……わ、私たち、」
「ん?」
「…………」
私たち、したんですか?なんて、そんなドストレートなこと聞く勇気があるわけがなくて、思わずぱっと視線を逸らした。
それに、ずっと見てたなんて告白まがいなことをしてしまったあげくそういう事になってしまったのだと明言されたら、私はもう精神的にも社会的にも死亡だ。闇に葬られる。
「…赤くなったり青くなったり、忙しいね」
「…他に何か、言いましたか、私」
「何かって?」
「…へ、変なこと…?」
「ははっ、変なことって」
「笑いごとじゃないんですっ」
吹き出すように笑った彼が、するりと頬に伸ばしていた手を下ろして、そのままベッドに腰かけた。
私に背を向ける彼が一体どんな表情をしているのか、この位置からではよく見えない。
「そうだな、変ではないけど」
…ただ。
「キスしてってせがんで来た時の顔は、可愛かったよ」
私は今も、この先も、彼に翻弄されるのだということだけは
「あと、ずっと触れたかったとも言ってたかな」
考えるより先に、私のいわゆる本能というものが
「そんなに好きだったんだね?俺のこと」
その一瞬で、察知していた。
「…あ、あの、このことは誰にもっ…」
「言わないよ。でも佐岡さん、俺に弱み握られちゃうけどいいの?」
「…え」
「まあ、今さら逃がす気なんてさらさらないんだけどね」
---きっともう、逃げられないのだと。