君のカメラ、あたしの指先
「それでね……そのマネージャーの女の子が、『優馬はあなたのものにはならないから』って」

「宣戦布告か……」

 また随分古典的なセリフが来たな。いるんだ、ほんとにそういうこという人。

「それで……楽しそうに一緒に帰っていったの」

 しょぼん、と俯く有紗がなんていうか、お水がなくて萎れたお花みたい。
 なんて言ってあげるべきかな、これ。


「気にしなくていい」と言うのは簡単だ。でもたぶん、有紗が待っているのはその言葉じゃない。

「有紗はなんて言ったの?」

「返事する前に帰っちゃった」

 吐き捨てるってやつか。やな感じ。

「傲慢だねーまったく」

「え?」

「瀧川くんはそもそも『モノ』じゃないんだし、選ぶ権利は瀧川くんにもあるってこと。恋はひとりでも成り立つけど、恋人関係はひとりじゃ成り立たないよって話だよ」

 自分だけに選択権があると思ったら大間違いだ。恋愛というものは、相手に想われて初めて成立するんだから。

 目先ばっかりに気がいって大事なことを見落としたら、あとで後悔するのは自分自身だ。
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