サトウ多めはあまあまデス
「心愛から離れていいなんて一言も言ってないぞ。」

「パパ!」

「喜一さん…。」

 二人で一斉に驚きの声を上げる。

「だいたい目の前で娘にプロポーズまがいなセリフを言っておいて出ていくつもりか?」

 パパったら最初から聞いてたのね。でもパパもそう思うよね?あれじゃまるで…。

 ケイちゃんはバツが悪そうな顔をして、それでも気持ちは変わらないようだった。

「喜一さんにそう言われても俺はもう…。」

 パパはケイちゃんの肩に優しく手を置いて私のベッドまで来た。


「そろそろ心愛にも説明しないといけないね。」

 そう言ってケイちゃんにもベッドの側に座らせた。そして口を開く。

「佳喜はパパとママの子だ。」

 まだ言うか…くそじじいめ!

「そう決めたのは愛子だ。」

「え…。」

 思わず顔を見ると優しく微笑むパパと、つらそうな顔をして俯いているケイちゃんがいた。

「そして心愛。お前もだよ。」

 優しく告げるパパの言っていることが少しも分からない。私も?ケイちゃんを家族にって決めた??

 私の疑問は置き去りにパパは話を続けた。

「佳喜は愛子がボランティアで習字を教えていた…身寄りのいない子供がいる施設にいた子なんだ。勉強熱心でね。愛子にもよく懐いていた。」

 施設の…。じゃやっぱり私と兄妹ってわけじゃ…。

「名字も同じ佐藤だしな。家族になれるなって冗談っぽく話してたんだ。
 それである日、カフェで心愛に会わせたんだよ。心愛はあまり覚えてないみたいだけどな。」

 そこまで話すとパパは鞄から何かを取り出して私のベッドの上に置いた。

「ここから先は愛子が心愛に話したいっていうからビデオを撮ってある。いつか大人になった時か、それとも見せる時が来たら見せて欲しいって。」

 ママから…。

 ドキドキしてDVDプレイヤーを食い入るように見つめた。

 ケイちゃんも知らなかったみたいで、同じように見つめている。
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