冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
そんなことを思いながらも、先ほどからずっと胸の鼓動は速いまま。膝に置いてある手をもぞもぞと動かしてぼうっとしていると、目の前にお酒の入ったグラスが置かれた。

「どうぞ。アップル・ブレイクです」

「すすす、すみません、ありがとうございます」

顔を上げると目が合って、ドキッとしながら慌ててペコペコするわたしに、由佐さんはふっと優しく微笑む。
どうしよう、挙動不審な女だと思われたかもしれない……!

夏穂子にもお酒が用意され、胸の高鳴りがおさまらないまま、ゆっくりとカクテルを飲んだ。
お酒のことは詳しくないけど、炭酸がきいていてすっきりしているから、好きだと思える味だった。なので、自然と「美味しい……」と呟く。

「好みに合ってよかったです。今夜はゆっくりしていってください」

「あ、はい……!」

由佐さんの笑顔に、わたしはときめいていた。
もっとお酒を飲んで、自分の中にあるもやもやしたものを忘れたいと思っていたけれど、じっくりと静かにカクテルを楽しみながら時間を過ごすのもいいかもしれない。

夏穂子との会話にときどき由佐さんを交えながら、わたしはお酒を進めていた。
由佐さんは二十九歳で、三坂さんとは高校時代からの友人らしい。最初は由佐さんと話をすることに緊張していたけれど、いつのまにか慣れて笑い合ったりしていた。

優しくて、仕草が綺麗でかっこいい由佐さんに、わたしはすっかり夢中だった。
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