冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
お店に来てからどれくらい経っただろう。
ちびちびとお酒を進めていたはずだけど、一軒目である程度飲んでいたせいか体が気だるくなってきて、頭もぼんやりしてくる。

頬杖をついて夏穂子の声を心地よい気分で聞きながら、瞼を閉じたりしていた。
隣で肩を叩かれて、なにか言われたような気がしたけれど……目を開けたくなくて、「うん」と返事をして、そのままにしてしまった。

「……紘奈さん、起きて」

うん……? 耳元で、誰かに呼ばれている。
唸りながら頭を動かして少しだけ目を開けると、茶色い板……カウンターテーブルが視界にあって、どうやらわたしは突っ伏して寝ていたみたい。

待って、確か夏穂子と一緒にbarに来てお酒を飲んでいて……あれ、もしかしてわたし、あのまま寝ちゃったの?
嘘でしょう、由佐さんに困った客だって思われたかもしれない。かっこいいなって思っていた人に幻滅されてしまったら……嫌だな、もうこのまま起きたくないよ……。

寝起きのぼうっとした思考のままそんなことを思っていると、ふわりと頭を撫でられた。
優しくて温かい手の動きが心地よい。

「ん……気持ちいい……」

夏穂子が頭を撫でてくれていると思って、わたしは甘えるような声でそう言った。
するとピタリと手が止まって、ほんの少し間をあけたあと、わたしの髪に指を絡ませるようにして手は背筋のほうへゆっくりと動いていった。
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