冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
なんだろう、急にドキドキする。服の上から撫でてくる手に、ビクン、と反応してしまった。

「夏穂子……?」

違和感を持ったわたしは体を起こして隣を見ると、そこには由佐さんが座っていた。

「大丈夫ですか?」

わたしを気遣ってくれる由佐さんに、目をぱちぱちさせる。
由佐さん……!? どうしてわたしの隣に……あれ、夏穂子はどこにいったのだろう。今わたしの頭を撫でていたのは、夏穂子じゃないの?

慌てながら店内を見渡すと、お店に入ったときは満席だったテーブル席にお客さんはひとりもいなくて、由佐さんとわたししかいない。
これってもしかして……。

「嘘、今何時ですか!? お、お店終わっていますよね!?」

「はい、夜中の二時なので、営業はとっくに終わっていますよ。夏穂子さんは恋人の男性が迎えに来てくれたそうで、そのとき紘奈さんを起こしたけど反応がなかったので純……三坂さんがあなたのことを送ると言って、夏穂子さんたちはそのまま帰っていきました」

夏穂子、帰っちゃったの!?
一瞬状況がのみ込めなかったが、バッグに入っている携帯を取り出して確認してみると夏穂子から、《紘奈、いつのまにか寝ちゃってびっくりしたよー。慶一さんが迎えに来てくれたから先に帰るね》というメールが来ていた。
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