冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
自分の失態が情けなくてとにかく頭を下げて謝ると、由佐さんは「大丈夫ですよ」と優しく笑ってくれた。でも本当は、迷惑な客だと思っているかもしれない。

「それで、三坂さんが紘奈さんを送るという話だったんですが、彼、用事ができてしまって。俺が代わりに自宅まで車で送ります」

「えっ……!?」

静かな声色でさらりと言われて、わたしは由佐さんを見つめて固まる。
これ以上迷惑をかけられない、でも、由佐さんともう少し一緒にいたいという気持ちが同時に浮かんで戸惑っていると、彼が申し訳なさそうな顔をする。

「俺じゃダメですか?」

「い、いいえ、そんな……! あの、本当にすみません、迷惑ばかりかけてしまって。……よろしくお願いします」

「平気ですよ」

遠慮はもちろんあるけれど、ふたりきりということに嬉しくなってしまっていた。彼の穏やかな笑みにほっとしたとき、ふと、わたしのことを撫でていた手を思い出す。

あれは夏穂子だと思っていたけれど、夏穂子は先に帰っていたんだよね。じゃあ、わたしの頭を撫でていたのは……。

はっとして、由佐さんを見たわたしの頬がじわじわと熱くなってくる。それに気づいた彼が、口もとを緩めた。

「どうかしました?」

「あっ……いえ、その……あの、さっきわたしの頭を撫でていたのって……」

遠慮がちに相手を窺いながら尋ねると、彼はそっとわたしの顔を覗くようにして目を細めた。

「俺ですよ」

その一言に、ドキン、と胸が大きく鳴った。
あの手は由佐さんだったんだ……わたし、『気持ちいい』なんて言ってしまって、すごく恥ずかしい……!
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