冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
そうして五曲目をうつむいて聞いていた途中、男性の革靴が視界に入って顔を上げると、『なにをやっているんだ』という顔で口を動かした由佐さんがそばにいて、わたしは慌ててイヤホンを外した。

「す、すみません、あの、待っていられなくて……!」

「立ち聞きしていたら話が長くなりそうだと思って、音楽聞いて時間潰そうとしたのかよ」

「そんなつもりじゃ……!」

否定をしようとしたが、香弥さんが気持ちを伝えたのと、由佐さんが断った部分は確かに聞いてしまったので、まず「すみませんでした」と謝った。

「でも、最初のほうしか聞いてません! 音楽を聞いていたのは、これ以上聞いたらダメだと思ったからで……」

「君がいることは知っていたよ。エレベーターから人が降りた足音の数と、近くでした足音、香弥さんの視線が俺の後ろに一瞬向いたのでなんとなくわかったし、別れ際に香弥さんも言っていたから」

そんなに最初ほうからわたしがここにいること、由佐さんにバレていたなんて……! 居た堪れない気持ちでいっぱいになってわたしはうつむくと、彼は小さく息をついた。

「ちょっと驚いたよ。あの人が、俺のことそんなふうに思っていたこと。友達のように話ができる、仲のいい先輩だったから」

「……どうして、最初は気まずそうだったんですか?」

「課にいた人たちが彼女と会社を始めるって聞いたとき、実は俺も誘われたんだ。でも、俺は今の会社で営業の仕事がしたかったから断った。そのとき、前の課長と口論になったんだ。どうしてこっちに来ないんだ、と散々言われたけれど、今はもうお互いに頑張ろうって話になったよ。けど、その場にいた香弥さんに迷惑をかけたままだったから、悪いと思っていたんだ」
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