冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「あの、えっと……」

撫でられたときの感覚を思い出し、火照っている頬にさらに熱が集まっていくようで、頭もクラクラしてきた。
どうして、あんなふうに触ったのだろう。訊きたいけど、訊いていいのかわからなくて、わたしは由佐さんを見つめていた。

「起こそうと思って声をかけたけど、俺の声に眉を寄せた紘奈さんを見たらもう少し寝かせてあげたくなって、頭を撫でたんです。……可愛かったから」

彼と目を合わせたまま、熱っぽい感覚にとらわれていく。なんだろう……由佐さんに惹きこまれていくような、そんな一瞬だった。
わたしはなにも反応できないまま、頬を赤くしているだけ。

ゆっくりと近づいてくる由佐さんの綺麗な顔を目の前にしたわたしは、抵抗しようと思えなかった。
軽く触れた唇を見つめ合って、再びキスをする。後頭部を手で支えられ、ぐっと抑え込むようにキスをされると、もうなにも考えられなくなっていく。

「っ……んっ、由佐さん……」

唇を離して、とろん、としたまま名前を呼ぶと、彼の口もとがわたしの耳へ移動した。

「俺にこんなことをされていいんですか?」

彼の魅惑な声色と、耳もとにかかる息にビクッと体を震わせたあと、わたしは小さくうなずいた。

出会ったばかりなのに、という理性は頭の隅でちらついただけで、由佐さんに惹かれる気持ちでいっぱいだった。

「……それなら、朝まで俺と一緒にいてください」

こうしてキスをされたということは、わたし、期待してもいいのかな?
甘い囁きにときめいたわたしは、由佐さんと一緒にお店を出た。
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