冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
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由佐さんと出会った日から二週間後、わたしは夏穂子とふたりでこの前と同じ居酒屋でお酒を飲んでいた。

「それから会っていないし、連絡しても繋がらないんだよね」

わたしの言葉に、ジョッキを持ったまま夏穂子は絶句している。
たぶん、わたしがその場の勢いで男性と一夜を過ごしたことに驚いているのだろう。
そんなことは、今までしたことがなかったから。

しかも由佐さんとは、それっきりになってしまっている。

「待って、あの後由佐さんとホテルに行ったってこと? しかもそれから、なにもないの?」

「ちょっと、夏穂子……声大きいよ」

がやがやしている居酒屋とはいえ、内容的に周りに聞こえないか気にしてしまう。

「だって、連絡先くらい聞けたかなぁ、なんて思っていたらまさかそこまで……。紘奈がそうやって気になる男性に積極的になれたのはうれしいし応援するけれど、由佐さんが遊びだったらショックだよ……そんな人には見えなかったけどさ。それで、由佐さんとはまったく連絡とれないの?」

「連絡したのは一度だけ。お店に行った次の日に電話してみたけど出なかったの」

「じゃあ、もう一度連絡してみれば?」

夏穂子の言葉に、わたしは視線を落として「うーん……」と渋る。

躊躇してしまう理由は、少しでもわたしのことを気にしてくれているのなら、かけ直してくるよね?と、思うからだ。

電話に出ずそのままということは、わたしとの関係は“あの日だけ”だったのかもしれない。
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