冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
だってよく考えてみて、由佐さんのようなかっこいい男性と出会ったその日でうまくいくなんて、ありえないでしょう。相手はただの“遊び”だったというほうがしっくりくる。

そう頭の中ではわかっているのに、この二週間、携帯が気になって仕方なかった。
もしかしたら由佐さんから連絡があるかもしれないと思って、画面を確認してしまう。

もう一度会いたい、由佐さんのことを知りたい、遊びなんかで終わるのは嫌だ……。
わたしは携帯を取り出して、彼の番号を表示する。

「電話、してみようかなぁ……」

もしかしたら連絡できなかった事情があったのかもしれない。
番号を見ながら考えていると、前に座っている夏穂子が手を伸ばしてきてわたしの携帯を取り上げ、操作する。

「気になるならかけるしかない!」

「……えっ!?」

「だって、紘奈はこれで終わりたくないって、思っているような顔してる」

そうでしょう?と言いながら返された画面には《発信中》という文字が出ている。
嘘……!? まだ心の準備ができていないのに!

焦って画面と夏穂子を交互に見ていたが……しばらく経っても繋がらなかったので、ほっとしたような、がっかりしたような気分でわたしは電話を切った。
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