冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
***


「嶋本さん、さっきからそわそわしてどうしたんだ?」

「えっ……!? あ、いえ、そんな」

「もしかしてこのあと、仕事終わりに彼氏とデート?」

谷池さんの言葉に思いっきり慌てるが、相手がそこにいる“市崎課長”だということは、知っているくせにわざとだ。

ははは、そうです、なんて笑ってみたとき、後ろから「紘奈」と名前を呼ばれた。
その声に、えっ!?と振り返るわたしと同じように、隣の谷池さんも驚いている。だって由佐さんが、オフィスでわたしの名前を呼んだから。

「昨日の夜のせいで寝不足じゃないか? 俺は眠いから、俺の部屋で夕食にしよう」

「え……!?」

呆気にとられるわたしと谷池さんに構うことなく、由佐さんはわたしに微笑む。
昨日、話し合って“恋人ということは隠さない”ということになり、今日も一緒に帰ろうという話はしていたけれど、まさか、こんなに堂々と……!?

「ほら、帰るぞ。……あ、ファイル忘れた」

由佐さんが自分のデスクに戻る間、わたしは席を立って周りにお疲れ様でした、と挨拶をする。もちろん、周りはざわついていた。

「ゆ、由佐さん、あんなに堂々と……いいんですか?」

「ああ、いいよ、わざとだから。香弥さんとの噂もまだ残ってて、『美人と営業事務の女で二股!?』なんて言われているのも、消えるだろうし。君が俺の恋人だという事実に文句をつけるようなやつがいたら、俺が許さない」

彼の言葉は心強かったので、わたしはエレベーターの前で背後を気にするのをやめた。
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