冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「もう、勝手にかけないでよぉ……」

ため息交じりにそう言ったわたしを、夏穂子は一応申し訳なさそうにしながらも枝豆を食べる。

「ごめん、ごめん。でもこの時間出ないのはお店かもしれないから、行ってみる?」

「嫌だよ、気まずい!」

会って『どうして連絡してくれないんですか?』なんて聞けるわけがないし、もしかしたら相手はわたしのことを迷惑だと思っているかもしれない。そんな相手に会いに行く度胸なんて、さすがにない。

「まあ、そうだよね。とりあえず連絡してみたことだし、電話待ってみるしかないね」

そう言ってビールを飲んだ夏穂子に小さくうなずいたわたしは、テーブルに置いている携帯をしばらく見つめていた。
今度こそ、掛け直してくれるかな? 掛かってきたらまずなにを話そうかと、ひとりでごちゃごちゃと考えていたけれど、この日も次の日も携帯が鳴ることはなかった。


結局、電話はまた無視をされてしまい、数日そのことを気にしながらも新しい職場探しのことを考えていたとき、夏穂子が言っていた会社の話を思い出した。
『二十七階にある会社、事務員募集しているって!』
確か、IT関連会社だと夏穂子は言っていた。とにかく、早く仕事を見つけないと貯金もなくなって、家賃が払えなくなってしまう。

自分が働くには華やかすぎるビルだと思っていたけれど、連絡してみようかな。あのビルには、由佐さんが働いているお店もある……って、待って、それでは由佐さんがいるから決めたみたいになってしまう。
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