冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
気になる男性がいるビルに働きに行きたいだなんて、いい歳をして馬鹿みたいでしょう。
もう少ししっかりと考えないといけない。そう思うけど……、

「会いたいなぁ……」

部屋のソファに座って、天井を見ながら呟く。
もしかしたらあの日のことは夢で、登録してある由佐さんの連絡先も実は彼のものじゃなかったりして。キスしたことも、酔っぱらったわたしの妄想だったのかもしれない。

そう思って由佐さんのことを忘れようとしてみるけれど、肌に残っている彼の唇の感触をはっきりと覚えている。キスも、ホテルで過ごした夜も、すべて夢なんかじゃなかった――。

わたしは夏穂子に連絡して、事務員を募集していると言っていた会社のことを詳しく聞くことにした。
由佐さんに偶然会うことができるかもしれないという期待を抱きながらも、仕事探しだと思うようにした。


B.C. square TOKYOの二十七、二十八階にはシステム開発会社『Relay Life』が入っている。様々なソフトウェアの開発などを手掛けていて、業績を上げている会社だ。

猫の手も借りたいと思っているのは本当のようで、電話で働きたいことを伝えると、人事部の人に『面接に来てください』とすぐに言われ、履歴書を持って指定された曜日の午後一時に向かった。

はぁ……緊張する。面接なんて、就職活動以来だ。一応、訊かれそうな質問への回答などは考えてあるけれど、学生のときのように実践練習をしたわけではないから少し不安。
< 18 / 153 >

この作品をシェア

pagetop