冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「……そういえばあの日、俺は君とどんなことをした? 忘れたから教えてくれよ」

わたしの一瞬の動揺を見逃さなかった彼は、目を細めたあといたずらっぽく耳もとで問いかけてきて、ビクン、と体が震えてしまった。
敏感に反応してしまった自分が恥ずかしい。忘れようと思っているのに、どうして思い出してしまうようなことをするの?

由佐さんの胸を手で押して距離をとったわたしの顔は熱くなっていて、それを見た彼は面白そうに笑った。

「なんですか……」

「別に? からかいたい気分だったから」

彼の言葉で自分がどんどん惨めになっていくような気がして、悔しくなった。
相手にとってはその程度だけど、わたしは? ドキドキして、振り回されて、いちいち恥ずかしくなってしまって……。
もう、たえられない!

我慢できなくなったわたしは、気づいたら由佐さんの胸元のシャツを掴んでグイッと引き寄せていた。わたしの行動は予想していなかったものだったらしく、体の重心が傾いた彼の顔は驚いていて、自分の気持ちをぶつけるなら今しかないと思った。

「本当に最低……! からかうのは、やめてください!」

全力でそう言い放ったわたしは、彼を掴んでいた手を離し、すぐに給湯室から出た。
もう嫌だ! あんな最低な人にドキドキしてしまう自分が情けない。面白がる態度が、わたしの気持ちを踏みにじっているってわかってやっているんでしょう。

彼に惹かれたことは、もうなかったことにしたい!
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