冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「意味、わからない?」

ゆったりと動く唇を見ていたら自分の体が熱くなってきた。好みの女じゃないとキスしない、なんて、わたしのことを遠回しに好みだったって言っているって、そう捉えてもいいの? けれどあの夜は、遊びだったんでしょう?

「俺に言い返してくる君の反応、結構気に入ってる」

「……面白がっているだけですよね」

ムッとしたように言ってみるけど、本当はドキドキして苦しい。嫌な人って思っているはずなのに、彼のことをもっと知りたくなっている。お店にいたときの彼ではなく、わたしの上司で、いたずらっぽく口もとを緩める彼のことを……。

「――由佐? ……と、紘奈ちゃん?」

ビクッと肩を揺らして声のしたほうへ顔を向けると、そこには三坂さんがいて、わたしは慌てて由佐さんから離れた。

そうだ、ここはビルの入口で……先程からずっと人が行き来しているというのに由佐さんと近寄って話しているなんて、変だと思われる……! 会社の人に見られていないよね!? ていうか、三坂さんに見られてしまった。たぶん、お店に向かうところなのだろう。

とりあえず、「こ、こんばんは」とわたしは挨拶をした。

「この前、大丈夫だった? 由佐に送りを頼んじゃったんだけど」

「えっ……あ、はい、あの、寝てしまってご迷惑をおかけして、すみませんでした」

「いや、いいよ。ところで……今日はどうしてふたりが一緒に?」

三坂さんがわたしたちの様子を窺うように見てきたので焦っていると、代わりに由佐さんが答えてくれた。

「彼女、この前採用して俺と同じ会社で働いているんだよ」

「そうなの?」

先ほど由佐さんと話していた熱っぽさがまだ残っていて、顔もちょっと赤いだろうから、ふたりの視線から早く逃れたくてうなずいていると、三坂さんが険しい表情になる。
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