冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「由佐、お前紘奈ちゃんに変なことしてないだろうな」

「……なぜ?」

「口説いていたんじゃないか? 紘奈ちゃん、顔が赤い」

顔が赤いのは放っておいてほしかったのに……! わたしは、「赤くないです!」と頬を抑えながら慌てて否定をした。どうやら三坂さんは、あの夜わたしたちがなにをしたか知らないみたい。

「紘奈ちゃんは、俺の大事な知り合いの友達だから手を出したりするなよ。紘奈ちゃんも、こいつは女性を泣かせる悪いやつだから、絶対についていったらダメだよ」

「だってさ」

隣にいるわたしに由佐さんは茶化すように笑った。
もうついていってしまって、いろいろ最低な部分を見ちゃっていますなんて、真面目に心配している三坂さんには言いづらい……。

「由佐、彼女に酷いことをしたら許さないからな。……あ、店始が始まる。それじゃ、紘奈ちゃん。よかったらまたお店に来てね」

「は、はい。また行きます」

軽く手を振りながら三坂さんは去っていって、その後ろ姿を見送っていると由佐さんがふっと笑みをこぼした。

「俺は女を泣かせる悪いやつらしいけど、君は泣いた?」

「……別に、泣いていません」

わたしの顔を覗くようにして、意地悪っぽく口もとを緩める由佐さんにムッとする。再会したときの冷たい態度に傷ついたけれど、本人に言うつもりはない。
こういう男は、三坂さんの言うとおり悪いやつなのだ。
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