冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「無理なんかじゃないでしょう、紘奈の働いていた会社だって結構大手だったし。いつまでも無職でいるわけにはいかないんだから、連絡してみなよ。会社名と電話番号、後でメールしてあげるからさ」

「うーん……」

「結構かっこいい人が働いているみたいだし、いい男と出会えるチャンスだよ!」

そんなことを目的にするわけがないでしょう!と、夏穂子に少し呆れつつ、確かにいつまでも無職でいるわけにはいかないなと、改めて考えていた。
ずっと悔やんでいたってしょうがないから、今日で前の職場のことを引きずるのは終わりにしよう。

ビールをぐいっと飲んで摘みのサラダへと箸をのばし、それから一時間半ほど夏穂子と世間話をしながらお酒を飲んだ。


お酒を飲んでいると楽しい気分になって、どれだけ落ち込んでいても友達と笑っていられる。でも、そんなのは一瞬だ。

「あーあ……」

夜の九時になり、明日は彼氏と約束があると言っていた夏穂子のために、いつもより早めに解散しようとわたしは言ったけど、本当はもう少し飲みたい気分だった。
会計を済ませてお手洗いに行った夏穂子を店の外で待っている間に、ひとりでどこか違う店に行こうかなと、タクシーをつかまえようと思ったけれど、歩道からではタクシーは止まらず、店前の歩道の脇でわたしは大きなため息をついていた。
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