冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「言い訳はしないのか?」

淡々とした表情でそう言いながら、由佐さんはわたしのデスクの上にあるファイルを手にとり、中身を確認する。それは、書類の作成に必要なものだった。

「……書類は作成してデスクに置いたはずなのに、ないんです。いくらわたしが書類を作ったって言っても、提出できないのならそれは仕事ができていないのと一緒ですから」

「そうか」

……それだけ? もっと文句を言われるかと思ったのに、由佐さんはファイルを眺めたままわたしの横にいる。

「あの……怒らないんですか?」

「怒られたいの?」

「ち、違いますけど。午前中も頼まれた仕事を抜かして注意されたから、『なにをやっているんだ!』って言われるかと……」

「書類は作ったらすぐに渡すようにしてくれよ。ほら、さっさと書類作り直すから必要なデータ、俺のパソコンに送って」

そう言った由佐さんは、ファイルを持って自分のデスクへ戻っていった。
もっと厳しいことを言われると思ったのに、意外と言葉はやわらかく、しかも書類を作ったことをわたしの言葉通り信じてくれた。

「……手伝ってくれるんですか?」

「これが終わらないと帰れないから」

ツンとした言い方なのに前よりは嫌味に感じないのが不思議で、データを送信しながら、胸の奥がくすぐったいような感じがしていた。
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