冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
そんなことを思いながら仕事をしていた週末、飲み会をしないかと課の人たちに誘われた。
新しい企画の営業が上手くいったし、まだやっていなかったわたしの歓迎会も含めて飲みにいこうと言ってもらえたので、参加することにした。

『課長も行きますよね?』と声をかけられた由佐さんも、どうやら参加するらしい。こういう飲み会に参加するんだな、と思いながら、彼も一緒だということに少しだけドキドキした。

飲み会の場所は駅近くの居酒屋で、夏穂子とも飲みに来たことがあるお店だった。週末の金曜日なので、会社員や大学生が多くて賑わっている。

三つのテーブルをつなげて席を作ってもらい、奥から座っていってわたしの隣には谷池さん、目の前には由佐さんという並びになり、なんて落ち着けない席になってしまったんだろう!と、心の中で焦った。

「嶋本さん、なに飲む?」

「えーっと……」

谷池さんに尋ねられて、飲み物のメニュー表を探していたら由佐さんがすっとわたしに差し出してくれた。

「君はさっぱりしたものが好きだろ。こっちの欄がサワーだよ」

「あ……ありがとうございます」

わたしのお酒の好み、覚えてくれていたんだ。胸がくすぐったくなっていると、隣にいる谷池さんがじっとこちらを見ていることに気づいて、慌てたわたしは「レモンサワー飲みます!」と注文を伝えた。
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