冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
だが、窓の外を眺めていて見えた景色を眺めていたら、余計な思いが吹っ飛んだ。

まだ沈んでいない陽の光が海に反射して、キラキラと光っている。高い場所から見下ろすビルなどの建物が小さく見えて、なんだか不思議。

「綺麗だな」

呟くように言った由佐さんは目を細めて外を眺めていて、そんな彼に優しい気持ちになりながらわたしは微笑んで「そうですね」と言った。
すると彼は、視線をわたしへと移す。

「まさか、君とこうして出掛けるなんてな」

「……ど、どういう意味ですか」

「純の知り合い関係の客だって知っていたのにうっかり手を出して、それ以上関わることはないと思っていたら、同じ職場になるし」

由佐さんの言葉に、再会したときのことが一瞬頭をよぎったが、彼がわたしを見ている目は冷たいものではなくとても穏やかなものだったので、あのときのようにうっとうしいと思われているようには感じなかった。

彼の中で、“軽い付き合いをした女”という印象が消えてくれていたら、うれしいな。

「わ、わたしだって、こんなふうに由佐さんと水族館に来たり、観覧車に乗ったり……普通に話して、楽しめるとは思っていませんでした」

会社に採用されて勤めはじめたころを思うと、想像なんでできないだろう。酷い人だなって、何度も思ったのだから。
< 83 / 153 >

この作品をシェア

pagetop