冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「わたし、由佐さんが好きだよ。でも……自分の気持ちを相手に知られてしまうのが、なんだか恥ずかしくて」

「最初にエッチしてるのに?」

「ちょっと……!」

馬鹿、それを言わないで!という気持ちで慌てたわたしは、周りにも聞かれていないか確認したあと、夏穂子を注意した。

「……最初に出会った日の出来事を忘れたわけではないし、それがきっかけだったんだけど、わたしは再会してから知った由佐さんに惹かれていったみたい。だって、会社に入った頃は気になってはいても、幻滅して最低な男だって思っていたわけだし」

つい気持ちを語ってしまったことにはっとしたわたしは、うつむく。けれど夏穂子は「彼のことを知っていくうちにやっぱり好きだと思ったってことだね?」と、面白がっているような声色でわたしの羞恥心を煽ってきて、居た堪れない。

「その気持ち、伝えないの?」

窺うようにそう訊かれたわたしはスプーンを持ち、唸りながら野菜スープのにんじんをつつく。

「いつかは伝えたいけど、でも、タイミングがわからないっていうか……」

「もたもたしていると、ライバルが現れるかもよ。由佐さん、会社でも人気なんでしょう?」

夏穂子の言葉にうなずいていたとき、今朝会った香弥さんのことが頭に浮かんだ。由佐さんは親しみを見せていなかったけれど、香弥さんのほうはもしかしたら彼のこと……わからないけど、好きだったらどうしよう。
< 94 / 153 >

この作品をシェア

pagetop