慰めのDISCO
ここのお手洗いは汚いのに加えて、ダンスホールより薄暗くて、あんまり好きじゃない。
私は用を足し、そそくさとトイレから出た。
ここのディスコは円形になっていて、中央は色んな人で入り交じってるけど、壁沿いはグループの溜まり場で、ほぼ定位置が決まっている。
違うグループの場所に入ると、面倒なことになりかねないから、必ず中央を通るようにしていた。
行きはしっかりと中央を通ってきた。
帰りも、もちろんーーーー
「可愛いね。どこの子?名前は?」
「俺らと遊ばない?絶対楽しいって」
トイレの前はナンパスポット。
そんな肝心なことを忘れてた。
一人で来ると危ないんだった。
だいたい女の子は皆、男をトイレ前で待たせている。
だけど、今私は一人。
状況は最悪。
「ツレがいるの、ごめんなさい」
「どこにいるの?そんなやつ放ってさー」
腕を捕まれて、連れていかれそうになった時だった。
「俺の女に何か?」
「燐……」
ナンパ男よりも、何十センチも高い燐にびびって、すぐ奴らは退散した。